新八茎鉱山

訪問日 2008年10月12日(日)
場所 福島県いわき市
天気
同行者
管理体制 一部Free、基本許可制(多分現役のため)
産出鉱物 ペグマタイト系、金属鉱物等
疲労度
危険度
オススメ度 ★★
備考 多種類の鉱物が採集できるが、今は量が少ない。

1、産地概要

八茎鉱山は、太田城主の佐竹氏によって開発が行われた鉱山で、主に石灰石を採掘していた。
この鉱山の歴史は長く、経営権がよく移り変わっている。
1906年(明治39年)7月に、ドイツ人の経営する輸入商社オット・ライメールス商会と、鉱山事業者の西村準三郎の共同出資により八茎鉱山合資会社が設立され、個人経営から会社経営へと移り変わることとなった。
この鉱山では石灰石が豊富に採れたため、八茎鉱山の社長であった広瀬金七と実業家岩崎清七は磐城セメント(後の住友大阪セメント)を設立し、四倉工業所(後の四倉工場)を建設した。
1926年(大正15年)には、八茎鉱山は磐城セメントに合併し、鉱山の経営権は磐城セメントに移った。
1954年(昭和29年)、経営権は磐城セメントから日鉄鉱業に譲渡された。
1978年(昭和53年)には、日鉄鉱業が八茎鉱山株式会社から分離され、鉱山の経営権は同社に移った。
さらに1983年(昭和58年)には、鉱山の経営権は八茎鉱山株式会社から新八茎鉱山株式会社に再び変更されて、現在に至っている。
だが、現役の鉱山だけあって、採集出来る場所や時間はかなり限られている。
また、鉱物の量も大分減っているので、採集には根気が必要である。

2、産出鉱物各論

1)、黄銅鉱 Chalcopyrite 化学組成 CuFeS2 硫化鉱物

真鍮色(黄色のようなもの)金属光沢の鉱物で、自形結晶を成すものもあり、その形状は変化に富み、大変おもしろい鉱物です。
黄鉄鉱と似ているのですが、黄鉄鉱のほうが輝きが強く、金色に近いうえ、黄銅鉱は脆いので案外簡単に見分けがつくと思います。

2)、閃亜鉛鉱 Sphalerite 化学組成 ZnS (鉄閃亜鉛鉱はFeSと表すこともある。) 硫化鉱物

黒色〜橙色で黒色は金属光沢で、橙色は透明でガラス光沢と非常に色彩に富む。
大体のものは黒色でガラス光沢が強い。
鉄分が混入すると、色が黒くなり、鉄含有率の高いものは「鉄閃亜鉛鉱」と呼ばれる。
そして、樹脂光沢で色の薄いものは「べっ甲亜鉛」とも呼ばれることがある。
結晶は四面体、八面体、十二面体などがあり、四面体の結晶が多い。

3)、硫カドミウム鉱 Greenockite 化学組成 CdS 硫化鉱物

この鉱物は黄色、赤褐色〜オレンジ色の樹脂光沢の鉱物として産する、唯一天然に産するカドミウムの鉱石で、産する場所は少ない。
このカドミウムは、「カドミウムイエロー」という鮮やかな黄色の絵の具として使われていて、「イタイイタイ病」で有名になった物質でもある。

4)、磁鉄鉱 Magnetite 化学組成 Fe2Fe3O4 酸化鉱物 

黒色金属光沢の鉱物で、八面体のキレイな結晶をしていて個人的にはなかなか気に入っている鉱物です。
名の通り磁石に吸い付けられる「磁性」という性質を持っていて、磁鉄鉱で釣りを楽しむことができます。
磁鉄鉱の中には、非常に強い磁気を持つものがあり、それらは「ロードストーン」と呼ばれ、方位磁針に用いられたりしています。

5)、磁硫鉄鉱 Pyrrhotite 化学組成 FeS 硫化鉱物

赤茶色〜茶色〜こげ茶色をした金属光沢を持つ鉱物で、主に塊状集合として産し、磁性があることから他の鉱物と区別することができる。
この鉱物の磁性は、内部構造中のFe空きの数に依存して変わり、磁性(空き)がない種類は単硫鉄鉱と呼ばれ隕石中から見つかっているらしいです。

6)、方鉛鉱 Galene 化学組成 PbS 硫化鉱物

黒色に近い灰色で金属光沢を持つ鉱物で、立方体の結晶として産するので、区別が容易です。
この方鉛鉱は、鉱石ラジオの最初の検波に利用されたらしいです。

7)、輝蒼鉛鉱 Bismuthinite 化学組成 Bi2S3 硫化鉱物

8)、輝コバルト鉱 Cobaltite 化学組成 CoAsS 硫化鉱物

9)、硫砒鉄鉱 Arsenopyrite 化学組成 FeAsS 硫化鉱物

銀白〜灰色・黒色や黄色などの多彩な色と形を持つ鉱物で、日本だと大分県尾平鉱山産のものが有名です。

10)、黄鉄鉱 Pylite 化学組成 FeS2 硫化鉱物

この鉱山では普通に産する。普通の形状としては、立方体が多い。

11)、コサラ鉱 Cosalite 化学組成 Pb7Bi8CuS20 硫化鉱物

12)、方解石 Calcite 化学組成 CaCO3 炭酸塩鉱物

方解石は、石灰石や大理石、さらには洞窟にある鍾乳石を構成している鉱物で、セメントに使われたり、建物の床や壁に使われたりと用途は幅広い。
この鉱山では、「石灰石」を採掘対象としているため、大量にある。

13)、ブロシャン銅鉱 Brochantite 化学組成 Cu4(SO4)(OH)6 硫酸塩鉱物

14)、灰鉄ザクロ石 Andradite 化学組成 Ca3Fe2(SiO4)3 珪酸塩鉱物

灰礬ザクロ石と共に、スカルン鉱床に産する。

15)、灰礬ザクロ石 Grossular 化学組成 Ca3Al2(SiO4)3 珪酸塩鉱物

灰鉄ザクロ石と共に、スカルン鉱床に産する。

16)、緑簾石 Epidote 化学組成 Ca2(Al,Fe)Al2O(SiO4)(Si2O7)(OH) 珪酸塩鉱物

この緑簾石はグループ名でもあり、グループの一つとすると英名はdissakisite。

17)、珪灰鉄鉱 Ilvaite 化学組成 Ca(Fe2)2(Fe3)O(Si2O7)(OH) 珪酸塩鉱物

18)、灰鉄輝石 Hedenbergite 化学組成 Ca(Mg,Fe)Si2O6 珪酸塩鉱物

19)、透輝石 Diopside 化学組成 Ca(Mg,Fe)Si2O6 珪酸塩鉱物

20)、灰重石 Scheelite 化学組成 CaWO4 タングステン酸塩鉱物

21)、バビントン石 Babingtonite 化学組成 Ca2(Fe,Mn)FeSi5O14(OH) 珪酸塩鉱物

灰鉄輝石の中に真っ黒い脈状のものとして産する。
灰鉄輝石の空隙にあるものは、方解石が空隙を埋めてしまっているため、方解石を酸で溶かせば、はっきりした結晶が出てくるらしい。

22)、コバルト華 Erythrite 化学組成 Co3As2O8・8H2O 酸化鉱物

桃色の粉状・針状結晶として、産する。
主に磁鉄鉱の表面などに付着していることがあるが、大変小さいので分かりにくい。

23)、藍銅鉱 Azurite 化学組成 2CuCO3・Cu(OH)2 炭酸塩鉱物

孔雀石の周りに青色粒状結晶として産するが、結晶の大きさは小さい。

24)、孔雀石 Malachite 化学組成 Cu2CO3(OH)2 炭酸塩鉱物

この鉱山では普通に産する鉱物。
緑色皮膜状の孔雀石が磁鉄鉱などにくっついている。

3、採集記

第一回 2008年10月12日(日)


第一回 2008年10月12日(日) ←前の「御斎所鉱山」を見る

御斎所鉱山を出た私達は、車で新八茎鉱山を目指した。
途中、有名な柏屋の饅頭店舗があり、そこでこしあん饅頭をついつい購入。
新八茎鉱山が近づいてくると、大きな石灰石採掘跡や工場が見えてきた。

 ←新八茎鉱山の工場。やたらとでかい。

そのまま進んで林道に入り、しばらく道なりに進んでいくと、鉱山事務所が見えてきた。

 ←鉱山事務所。今回は人が居なかったが、整備はされている。

地図によると、この鉱山事務所の近くに採集できるポイントがあるそうなので、鉱山事務所の右脇に続いている道を進み、適当な場所で駐車し、とりあえず沢に向かって降り、沢の周辺で採集をした。
あまり下調べをしていないということで、何が採れるかあまり分からないので、とりあえず例によって、強力な磁石で釣りをしてみた。
結構釣れる鉱物が多く、楽しめた。
釣りにも飽きた頃、珍しそうな鉱物を探し始めたが、30分くらい探してもなさそうになかったので、引き上げることにした。

 ←鉱山事務所前の広場からの光景。

〜採取鉱物〜

1)、黄銅鉱 Chalcopyrite

2)、磁鉄鉱 Magnetite

3)、方解石 Calcite

4)、灰礬ザクロ石 Grossular

5)、孔雀石 Malachite

特に、めぼしいものは採集していない。

〜感想〜

後日、この産地の産出鉱物を調べたところ、放射能性のペグマタイト系の石が有名だということだった。
そのような石を一つも持って帰っていなかったので、またこの付近に立ち寄ることがあれば、もう一度ここを訪れたいと思う。

〜参考文献〜

鉱物観察ガイド 松原聰 編著 加藤昭・千葉とき子・宮脇律朗 著

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